阿部高和が雛見沢村に引っ越して来たようです・阿部殺し編3

スレ3


95 名前: 通訳(新潟・東北) 投稿日: 2007/03/24(土) 19:43:54.25 ID:v/Nb9oKfO
梨花は阿部から逃れようと、身をよじった。

しかし、阿部の手は花の手をがっちりと掴み、離さない。


「お願いです!高和!ボクの手を離してなのです…!…痛い!」

梨花の悲痛な叫びがガレージの中にこだまする。


しかし、阿部は怒りに目をギラギラさせていた。
梨花の悲痛な叫びはどうやら聞こえていないようだ。


「阿部さん…?梨花ちゃんに…何をやってるの…かな?…かな?」


と、不意にガレージの入り口から声がした。

 

128 名前: 通訳(新潟・東北) 投稿日: 2007/03/24(土) 20:00:21.41 ID:v/Nb9oKfO
「阿部さん…どうしてドライバーなんか…。」


「レナ……違うんだ!…これは…これは…。」


阿部は目を見開き、レナを驚いた表情で見つめた。


梨花が、阿部の緩んだ腕を振りほどくと、泣きながらレナに向かって走り出した。

「阿部さん…どうして?…なんで?」


抱きついてきた梨花の頭を撫でながら、レナが阿部を涙ぐんだ目で見つめて言った。

139 名前: 通訳(新潟・東北) 投稿日: 2007/03/24(土) 20:03:26.91 ID:v/Nb9oKfO
誰も…何も言わなかった…。


ただ梨花の泣き声だけが辺りを包む…。


レナは阿部の方を一瞥すると、梨花の背中を押して、そのまま行ってしまった。


阿部はドライバーを握り締めたまま、ただ下を向き、立ち尽くしていた…。

152 名前: 通訳(新潟・東北) 投稿日: 2007/03/24(土) 20:09:43.99 ID:v/Nb9oKfO
今日はもう仕事をする気にはなれない…。

阿部は帰り仕度をすると、トボトボとガレージを後にした。


梨花の言い方はあんまりだ…あんな言い方はない…。

阿部には、それを許してやれるだけの余裕がなかった。


沙都子の事…悟史の事…そして魅音の事…。


悟史同様、阿部も既に限界寸前である。

155 名前: 通訳(新潟・東北) 投稿日: 2007/03/24(土) 20:12:58.33 ID:v/Nb9oKfO
今の阿部はまさに爆発寸前の爆弾そのものだった…。


何かの拍子に…間違いを犯してしまいそうだった…。


阿部は歩きながら奥歯を噛み締めた。

頬の内側の肉を巻き込み、それでも噛み締めた歯を離す事ができない。


止めるんだ…!自分の肉なんか食って何になるんだ…。

161 名前: 通訳(新潟・東北) 投稿日: 2007/03/24(土) 20:15:21.14 ID:v/Nb9oKfO
口の中に血潮がにじみ出し、塩辛い独特の風味が広がる。


止めるんだ!止めろ!


そう叫び出しそうになり、阿部はようやく歯を離す事が出来るようになった。


徐々に視界がはっきりしてきた。
聴覚も…。


何処かで言い争う声がする…。

この声は…入江先生と……鉄平…!

217 名前: 通訳(新潟・東北) 投稿日: 2007/03/24(土) 21:03:17.55 ID:v/Nb9oKfO
「どうしてなんですか…!あなたの…あなたの子供なんですよ!!」

入江先生の怒鳴り声が響いてきた。


「じゃかしいわ!こんボケが!堕ろしたり何なりとすればええやないか!!」


鉄平がそれに怒鳴り返す声がした。

阿部は視線をそちらに向けた。


畦道の真ん中で、鉄平が入江先生の襟を掴んでいた。


入江先生の顔が怒りで歪んでいた。

224 名前: 通訳(新潟・東北) 投稿日: 2007/03/24(土) 21:08:44.75 ID:v/Nb9oKfO
「沙都子ちゃんに謝って下さい!…あなたは…最低な人間だ……狂っている!」


入江先生が顔を真っ赤にしながら言った。


「お前らが何とかせえやこんクソどもが!俺は知らへんで!」


そういうと鉄平が入江先生を突き飛ばした。
入江先生が短い悲鳴をあげながら尻餅をつく。


「あんなカス…どうなろうと知らへんがな…。」


鉄平はそう言いながら、ヘルメットをかぶると、スクーターに乗って何処かへ行ってしまった。

 

226 名前: 通訳(新潟・東北) 投稿日: 2007/03/24(土) 21:11:30.51 ID:v/Nb9oKfO
「入江先生!…大丈夫ですか…?」


阿部が入江先生に走り寄る。

入江先生は怒りに燃える目を、走り去る鉄平の背中に向け続けていた。


「入江先生…何があったんですか…。」


阿部が入江先生の肩をゆする。

入江先生の目が徐々に熱を覚まし、哀しみを帯び始めた。


233 名前: 通訳(新潟・東北) 投稿日: 2007/03/24(土) 21:16:51.75 ID:v/Nb9oKfO
「阿部さん…居たんですか…。」


こちらをチラリとも見ずに入江先生が呟いた。

「鉄平が…どうかしたんですか…?」


「私はただ……彼に謝って欲しかった…それだけなんです…。」


入江先生が哀しげな目を阿部に向けた。

そして哀しげな目でニコリと微笑む。


「私は…実に…愚かで…無力で……駄目な人間です…。医者をしていながら……人一人も助けられない…。」


257 名前: 通訳(新潟・東北) 投稿日: 2007/03/24(土) 21:31:25.61 ID:v/Nb9oKfO
入江先生は尻餅を突きながらグズグスと鼻を鳴らしてむせび泣いた。


「阿部さん……どうか…彼等を助けてあげて下さい…。」


入江先生がむせび泣きながら、泥まみれの手で阿部の手を掴んだ。


「入江先生……俺には…助けられません…。」

入江先生の手をしっかりと握りながら、阿部が言った。

262 名前: 通訳(新潟・東北) 投稿日: 2007/03/24(土) 21:34:46.26 ID:v/Nb9oKfO
入江先生が涙で濡れた顔を上げた。
目には相変わらず哀しみと…そして落胆が加わった。

「すいません…入江先生…。」


阿部は入江先生の手を離すと、立ち上がり、その場を後にした。


残された入江先生はいつまでも…いつまでも…濡れた目で阿部の背中を見つめていた…。


270 名前: 通訳(新潟・東北) 投稿日: 2007/03/24(土) 21:50:50.21 ID:v/Nb9oKfO
阿部が家に帰ると、沙都子が夕飯を作ってくれていた。


具合が悪いのに……妊娠してるのに……!


阿部は同情の気持ちとともに怒りがこみあげて来た。

こんなにも労って…心配してやってるのに…何故素直に寝てくれない!

どうして俺の心を乱すような真似をする…!
阿部のイライラが頂点に達する。


阿部はお玉で味噌汁の味見をしている沙都子ににじり寄った。

305 名前: 通訳(新潟・東北) 投稿日: 2007/03/24(土) 22:17:53.07 ID:v/Nb9oKfO
「阿部さん…今日は早いですわね…何かありまして?」

沙都子がやつれた顔に無理矢理笑顔を作った。

立っているのさえ辛そうな程だ。

阿部は沙都子の前まで行くと、ジッと彼女の目を睨んだ。

沙都子の笑顔がみるみるうちに不安げな顔に変化していく。

「大人しく寝てろと言っただろ……何故大人しくしてないんだ…。」

阿部が小さい…だがおぞましい程に含みがある声でいった。

「え…?阿部さんはどうして怒ってらっしゃるの…?」

沙都子が不安げな顔の上に油絵の具でも重ねるかのように不自然な笑顔を浮かべた。

口は笑っているが目は脅えきっている。

「どうして分からないんだ…。俺や悟史の苦労を…!」

阿部が沙都子に詰め寄った。

沙都子が不安げな笑顔を浮かべながら後ずさる。

323 名前: 通訳(新潟・東北) 投稿日: 2007/03/24(土) 22:37:52.53 ID:v/Nb9oKfO
「どうしてなんだ!どうしてお前は…そうなんだ!おい!沙都子!」


阿部が沙都子の肩を掴んで、ゆさぶる。

沙都子の体がガクガクと揺れた。


ついに沙都子が下を向いて泣き出す。

「私だって…私だって……辛いんですのよ…!少しでも…気を紛らわそうと…しているんですの…。阿部さんは…それすらも否定なさるのですか!!」


沙都子が下を向きながら怒鳴った。

「お前は妊娠してるんだよ!!!」


阿部が怒鳴り返した。


時が止まったかのように沈黙が辺りを包む…。

331 名前: 通訳(新潟・東北) 投稿日: 2007/03/24(土) 22:42:20.04 ID:v/Nb9oKfO
「え…?」


沙都子がキョトンとして阿部を見つめた。

「お前は……鉄平の子を妊娠してるんだよ…沙都子…。」


今度は阿部が下を向いた。


阿部の手から沙都子の体がスルリと抜け落ち、沙都子がヘニャリと床に座り込んだ。


沙都子は一言も喋らずに、ただ非難がましい虚ろな目を阿部に向けるだけだった。

348 名前: 通訳(新潟・東北) 投稿日: 2007/03/24(土) 22:57:29.24 ID:v/Nb9oKfO
沙都子は力が抜けたように座りこみながら、下を向いて無理矢理明るい声で呟いた。


「う…嘘ですわよね…?……そんなの…そんなの…絶対に信じませんわ…絶対に……絶対に!!!」


沙都子がわめきながら拳で床を叩いた。

「嘘ですわよね…そうですわよね…阿部さん…嘘だと言って…下さい…お願いします…お願いします…。」


沙都子が阿部のスボンにすがりつき、再び泣き出す。


阿部は気まずそうに目をそらすと、泣き付く沙都子を引きはがした。


もう…もう限界だった…。

阿部はダイニングの椅子を蹴り倒すと、うずくまって泣き続ける沙都子を置いて何処かへ行ってしまった。

5 名前: 前スレ補完 投稿日: 2007/03/25(日) 18:22:42.85 ID:LuFNP5M0
次の日…沙都子は阿部と一言も口を聞かず、ただうつ向いて阿部の家を後にした。
出産のため、今日入院するのだ…。


多分これからも…ずっと口は聞かないだろう…。


阿部は苦悩し、怒り、落胆し、悲しみに胸が押し潰されそうになった。


こうなった全ての元凶は…鉄平にある。


鉄平さえ…この世にいなければ…この世に…!!!


阿部はテーブルに無造作に転がったドライバーを手にした…。

ドライバーは、まるで阿部を魅了するかのようにギラギラと輝いた。

6 名前: 前スレ補完 投稿日: 2007/03/25(日) 18:23:05.84 ID:LuFNP5M0
このまま…このまま…破綻してしまうのなら……。


阿部はドライバーを握り締めた…強く…。


でも…一体俺はどうすれば……。

外は既に日が暮れてしまっていた。


阿部はドライバーを携えたまま…玄関から外に出た。

眩しいくらいの落日が、阿部の前途に陰をさす。

阿部は歩きだした…全てを清算するために…。

7 名前: 前スレ補完 投稿日: 2007/03/25(日) 18:23:39.12 ID:LuFNP5M0
鉄平の家に着いた時には、もう日が暮れきっていた。


濃い群青色が空に広がっている。
まばらな星屑がひょっこりと顔を出し、月明かりが畦道を照らす。


もうすっかり暗くなっているというのに北条家では電気も付けず、ただひっそりと静まっているだけだ。

物音一つしない…留守なのだろうか…。


阿部はドライバーを使って、玄関の鍵を構造ごと壊すと、ゆっくりと戸を開けて、中の様子を伺う。


薄暗い…そして嫌に静かだ…。

8 名前: 前スレ補完 投稿日: 2007/03/25(日) 18:24:00.14 ID:LuFNP5M0
阿部は足音を殺して、土足のまま、家のなかに侵入した。


なんだろうか…汗とタバコと酒と……何か食べ物の臭いと……すえた臭い…そして、これは……血の臭い…?


阿部の体内から汗がにじみ出て、つなぎを濡らす…。

ドライバーを握り潰しそうな程に、手に力をこめた。


阿部は鉄平がいるであろう居間に向かって歩き出した

 


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